
雄大な日高山脈が織りなすストーリー
日高山脈は1,300万年前
ユーラシアプレートに北米プレートが衝突し誕生しました
太古から続く険しくも美しい自然を抱く日高山脈は
国立公園となった今も、私たちに数々の物語を語り続けています

日高山脈襟裳十勝国立公園は令和6年(2024年)6月25日に国内35か所目の日本最大(陸域)面積の国立公園として誕生しました。日高山脈は内陸から海までの南北約150km、最高峰の幌尻岳、地質学的にも貴重なアポイ岳などがダイナミックに連なり襟裳岬へと至ります。また、裾野に広がる十勝平野からは雄大なパノラマを眺望できます。
日高山脈を知る入門編:4つのストーリー
2つのプレートの衝突で生まれた

氷河期の生き残りも内包する生態系
日高山脈南部のアポイ岳には、ヒダカソウやエゾコウゾリナなど固有種が数多く分布し、キタゴヨウ(ゴヨウマツ)やアカエゾマツの森が広がっています。沙流川流域にはエゾマツやトドマツなど亜寒帯性の針葉樹林が自生します。また、札内川の中流から下流には氷河期の生き残りとされるケショウヤナギの群生も見られます。
野生動物はヒグマやエゾシカの大型哺乳類が山麓部に生息。高山の岩場には氷河期の生き残りのエゾナキウサギや、襟裳岬付近の海岸ではゼニガタアザラシ生息しています。鳥類はエゾフクロウやアカゲラ、エゾライチョウ、シマエナガなどが見られます。両生類ではエゾサンショウウオやエゾアカガエル、昆虫類はアポイ岳にのみ生息するヒメチャマダラセセリ、陸産貝類の固有種アポイマイマイのほか、ミヤマカラスアゲハなどが生息しています。
ここに挙げたもの以外にも、山岳から海岸まで広範囲に及ぶ公園内には多様性に富んだ生態系が広がっています。一万年以上前の氷河期の生き残りであるエゾナキウサギやケショウヤナギが今も息づく生態系を内包するのが日高山脈なのです。


「日常」と「非日常」の二面性の魅力
日高山脈は、二面性の魅力を持っています。
一つは、「日常」の魅力。十勝平野越しに雄大なパノラマをいつでも眺めることができます。春は山頂の雪解け、夏は木々の青さ、秋は紅葉、冬は積雪を見て四季の移り変わりを体感できます。また写真家からは身近な被写体として親しまれています。
もう一つは「非日常」の魅力。幌尻岳を最高峰とする標高1,500m~2,000m級の山々は、登山上級者向けの難関です。整備された登山道は少なく、沢の遡行が必要だったりヒグマとの遭遇対策など高度な登山技術と知識が求められます。しかし登頂した際は、氷河の痕跡である「カール」や眼下に広がる麓の景色などを見ることができます。
このように、誰もが暮らしの中で身近に感じることができる「日常」と、難関をくぐり抜けた限られた登山者のみに与えられる「非日常」の二面性の魅力が日高山脈にはあります。


その懐(ふところ)に五感で触れる
日高山脈襟裳十勝国立公園は、約25万ヘクタールに及ぶ広大な面積です。その懐(ふところ)に触れに出かけてみましょう。1,300万年前の太古より続く日高山脈に思いを馳せながら自分の五感を通じて学んだり体験することで、今まで以上に「日常」や「非日常」の二面性の魅力をより深く味わうことができるでしょう。
2023年に国土交通省の水質調査で水の汚れを示すBOD(生物化学的酸素要求量)の最良値を記録し、清流日本一(最も良好な河川)になりました。川底が透けて見える透明度で、渓流釣りや水遊びをして過ごすのもおすすめです。
札内川園地の入口のフォトスポットです。発電ダムとして1954年に完成しましたが、翌年、豪雨で土砂に流され現在の姿となりました。滝を展望できる虹大橋では、10mの落差から飛び散る水しぶきを体感できます。
「日高山脈を知る、遊ぶ」ためのインフォメーションセンター。日高山脈のジオラマや山岳事故を伝える展示室、売店、キャンプ場やアクティビティレンタルの受付があります。登山、道路交通、熊出没情報なども発信しています。
●北海道河西郡中札内村南札内713
●TEL 0155-69-4378(4月下旬〜11月上旬)
●開館期間:4月下旬〜11月上旬
●開館時間:7時〜19時30分
●入館料:無料
●休館日:開館期間中は無休
ユネスコ世界ジオパークでもあるアポイ岳周辺のインフォメーションセンター。固有の地形や地質、自然に関する展示や、アポイ岳登山のための高山植物、ヒグマに関するリアルタイム情報を提供しています。
●北海道様似郡様似町平宇479-13
●TEL 0146-36-3601
●開館期間:4月~10月
●開館時間:9時~17時
●入館料:無料
●休館日:開館期間中は無休
日高山脈の地質や岩石を様々な視点から紹介する博物館です。4階建ての館内は「岩石」「登山ガイド」「山と人との関わり」などがパネルや標本、映像などで詳しく解説されています。
●北海道沙流郡日高町本町東1丁目297-12
●TEL 01457-6-9033
●開館時間:4月~10月/10時~17時(※入館は16:30まで)、11月~3月/10時~15時
●入館料:大人200円、小人(小中高生)100円
●休館日:月曜日